疝気の虫(せんきのむし)

TERAYAMA Shizumi/ 12月 28, 2012/ 落語/ 0 comments

$こうたろう.com

落語の世界にもちょっとHな噺がありまして。

艶笑落語というのだそうです。

聞き手は、想像力を膨らませて聴くことになるので
噺が面白ければ面白いほど、頭の中はとんでもないことになります。

ということで
数年前に書いたミニシナリオから、ちょっとHな設定の作品を。

「チェンジ!」

登場人物
・茂木光弘(52)平凡なサラリーマン。
・茂木マリ(21)大学生。光弘の娘。

○ 新宿歌舞伎町界隈(夜)
  クリスマスのイルミネーションに照らされた繁華街。
  町を行き交う人々。
  風俗店の看板が次々と映る。

○ 歌舞伎町にあるビル・全景
  脇道に立つ五、六階建ての小さなビル。

○ 同・三階にある一室・室内
  やや暗めの照明。
  アロマキャンドルの炎が揺れている。
  クリスマスソングが流れている。
  簡易性のベッドがあり、脇にはタオル・ローション・ティッシュ・ゴミ箱・ソフトドリン  ク・お湯の入った洗面器が置かれている。
  ベッドに腰掛けて頭を抱えている茂木光弘(52)。
  洗面器のお湯に片手を入れて、くるくるとかき回している茂木マリ(21)。
  二人とも視線を合わせようとしない。

マリ「(鼻歌で)ジングルベル、ジングルベル、鈴が鳴る……」

  マリ、洗面器から手を出す。

マリ「お客さん」
光弘「その言い方は止めなさい」
マリ「お父さん」
光弘「その言い方も止めなさい」
マリ「じゃあ、なんて呼んだらいいのよ」
光弘「呼ばなくていいから。少し黙っていなさい」
マリ「はーい」

  マリ、また洗面器に手を入れてくるくるとかき回す。

光弘「……いつからなんだ」
マリ「何が?」
光弘「だから、その、なんだ。こういうお店で働き出したのは」
マリ「一年くらい前かなあ」
光弘「アルバイトをしているんじゃなかったのか」
マリ「だから働いているじゃない」
光弘「接客業っていうから、てっきり……」
マリ「接客業よ」
光弘「まあ、そう、言えなくもないが……和子は知っているのか?」

  マリ、洗面器から手を出す。

マリ「お母さん?」
光弘「お前が、あの、いわゆる、こういう店で働いていることを」
マリ「知ってるわけないじゃん」
光弘「そうか」
マリ「お母さんは知ってるの?」
光弘「なんだ?」
マリ「お父さんが、こういうお店に来ること」
光弘「知っているわけないだろう。父さんは、今日、たまたまだな、会社の同僚が転 勤するからっていうんで、送別会を開いて、それでお酒を飲んで……」
マリ「酔っ払って、入っちゃんたんだ。まさか常連さんじゃないよね?」
光弘「バカを言うな」
マリ「田村さんも来てるの?」
光弘「田村がどうした?」
マリ「どうせ指名されるなら田村さんが良かったな」
光弘「おい」
マリ「普通、気がつくでしょ。写真見たら」
光弘「……」
マリ「信じられない」
光弘「それは父さんの台詞だ」
マリ「とりあえずチェンジでいいよね。時間もないし」
光弘「時間?」
マリ「あと三十分しかないから」
光弘「待ちなさい。まだ話の途中だろ」
マリ「話すことなんて、ないと思うんだけど。っていうか、この状況に耐えられない」
光弘「……」

  マリ、室内にある電話の受話器を取る。

マリ「もしもし、301のマリです。チェンジお願いします……はい……はい……了解 でーす」

  マリ、受話器を置く。

マリ「じゃ、そういうことで。安心して。お母さんには黙っておくから」
光弘「……」
マリ「あ、断っておくけど、うちの店、キスはオプションだからね」
光弘「えっ?」
マリ「当たり前じゃん」
光弘「基本だろ、キスは」
マリ「知らないわよ。でも次に来る子、新人って言ってたから、案外ごまかせるか  も。クリスマスサービス。じゃっあねー」
光弘「あ、おい、こら」

  マリ、部屋を出て行く。

光弘「……新人」

   了


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