禁酒番屋(きんしゅばんや)

TERAYAMA Shizumi/ 10月 9, 2014/ 落語/ 0 comments

nihonnsyu

「笑の大学」という三谷幸喜さんの作品があります。
映画化もされたので、ご存知の方も多いと思います。

が、僕が今回取り上げたいのは、舞台版です。
西村雅彦さんと近藤芳正さんによる二人芝居です。

映画版は観ていないので感想は控えさせて頂きますが
舞台版は、僕の演劇史の中でもトップクラスに入る面白さでした。
ちなみに演出は三谷さん自身ではなく、山田和也さんです。

世間では、すでに西村さんはブレイクしていましたが
この舞台で、僕は近藤芳正さんという俳優の素晴らしさを知りました。

ざっくりとあらすじを説明すると
戦争への道を歩み始めていた昭和15年の日本。
「喜劇は不謹慎」と、上演許可を出さない検閲官と
何とかして喜劇を上演したいと願う劇作家の攻防を描いたものです。

うん、またなんか今のご時世とリンクしてきたぞ。
以下、ネタバレも含みますので、ご容赦下さい。

反対されれば、俄然その気になってしまうことってありませんか?
注意されればされるほど、その上を行こうとする天邪鬼的向上心。

たとえば、今年もノーベル文学賞の受賞を逃した村上春樹さん。
数年前にイスラエル国から、とある文学賞を受賞しました。

当時のイスラエルは(今もですが)ガザ地区への侵攻が尋常ではなく
多くの同業者や関係者や読者から、受賞拒否を勧められたそうです。

それでも村上さんは、イスラエルまで行って受賞式に参加しました。
その時のスピーチが、後にこれまた議論を巻き起こした「壁と卵」の話です。
(興味のある方は検索してみてください)

そのスピーチの冒頭で、村上さんは
「反対されると、その真逆のことをやりたくなる」と述べています。

すべての作家や芸術家がそうだとは言いませんが
得てして、ひねくれ者が多いことは事実です。

常人では思いつかないような発想を生み出すには
人と違うフィルターを通して、世界を見つめることが必要で
その結果、変り者扱いをされてしまうのです。

あ、常識はきちんとあるのですよ。
口だけで吠えるのではなく、正直者すぎるくらい常識があるからこそ
そのズレや脱線した時の面白さを、彼・彼女らは理解しているのです。

反対意見を踏まえた上で、それらを納得させるだけの熱意と技術。
アイディアは舞い降りるものではなく、内なるモノから込み上げてくるわけです。

「笑の大学」で、劇作家は何度も書き直しを言い渡されますが
書き直す度に「笑い」の要素が増えていってしまうという皮肉さが
西村さんと近藤さんという怪優によってコミカルに描かれています。

ラスト手前、一番のクライマックスシーンで
検閲官役の西村さんは、最大の無理難題を押し付けます。
その無理難題に対して「やってやる」と宣言する劇作家役の近藤さん。

そしてここまで、これでもかというほど笑いを誘っておきながら
一気に涙腺が緩み、涙を誘うラストシーンへと物語は進みます。

役者二人もさることながら
僕はこの作品に、三谷さんの劇作家としての意地と覚悟を見た気がします。

舞台版もDVDが発売されていますので(多分、まだあると思います)
もしご興味のある方がいらっしゃいましたら、強くお奨めいたします。

芸事に限らず、あなたは、自分の仕事や役回りに誇りと情熱を持っていますか?
なんとなく、惰性で毎日を過ごしていませんか?

いつだって本気度は試されているのです。
堅物になれということではなくて
遊び心と、若干の反骨心を持って。

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今回の投稿を持ちまして、カテゴリー「落語」は最終回を迎えることになりました。
全100話ありましたから、100記事投稿したことになります。(きっと)

すでに出来上がっている物語をベースに
そこからインスパイアした何かしらを、別の形に置き換える。

これがなかなか手強い作業で、途中何度か挫折しかかりましたが
100という数字が、一つの目標というか指針になっており
どうにかこうにか最終話までこぎつけました。

少しでも、読者のみなさんと共有しあえる何かが残せたのなら幸いです。

では。


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